クメール・ルージュ裁判に対する我が国の支援

令和4年10月6日
令和4年10月
在カンボジア日本国大使館
 

1.クメール・ルージュ(KR)裁判とは

  • KR政権(いわゆるポル・ポト政権)は、1970年代後半に100万とも200万ともいわれる自国民の大虐殺を行ったとされ、KRの行為は20世紀最悪の人道に対する罪の一つとされています。 KR裁判とは、KR政権幹部や最も重大な責任を持つ者をカンボジア刑法、ジェノサイド条約上の犯罪や人道に対する罪などに関して裁くための裁判で、カンボジア国内の特別法廷で国連の協力を得て実施されてきました。
 

2. KR裁判の進展

  • カンボジア特別法廷(Extraordinary Chambers in the Courts of Cambodia (ECCC))は、2006年7月に活動を開始しました。2012年2月3日、同法廷最高審(第二審)は、第一事案としてドゥイッS21国家中央治安本部 (トゥオルスレン政治犯収容所)所長を無期禁固刑とする判決を出しました(2020年9月に死去)。
  • 2011年6月、初級審は、第二事案としてヌオン・チア元国民議会議長、キュー・サンパン元国家幹部会議長、イエン・サリ元外交担当副首相(2013年3月に死去)、イエン・ティリット元社会事業相(2012年9月に後認知症と診断され、裁判を停止。2015年8月に死去)の元KR 政権幹部に対する、本件裁判の中で最も重要とされる公判を開始しました。
  • 第二事案は、住民の強制移動等の罪を扱う第1セグメント、及び虐殺、強制結婚等の罪を扱う第2セグメントに分けられ、2016年11月、最高審は第二事案第1セグメントについて、ヌオン・チア元国民議会議長、キュー・サンパン元国家幹部会議長に対し無期禁固刑の判決を下しました。また、第二事案第2セグメントについて、2018年11月、初級審は、ヌオン・チア元国民議会議長、キュー・サンパン元国家幹部会議長に対し、無期禁固刑の判決を下し、両者は最高審へ上訴を通知しました(ヌオン・チア元国民議会議長は2019年8月に死去し、事案は棄却)。また、2022年9月、最高審は、キュー・サンパン元国家幹部会議長に対して、第二事案第2セグメントの初級審判決を支持する判決を下し、これをもってKR裁判の全ての公判事案が終了しました。
  • そのほか、第三事案、第四事案の被疑者の司法捜査が進められましたが、いずれも不起訴となっています。
  • 2022年9月までに全ての裁判プロセスは終結しましたが、今後数年間に亘り、残余機構として存続し、刑の執行や被害者救済関連活動、文書管理、普及啓発・教育活動等が実施されます。
   
                           
          裁判の様子              無期禁固刑に処せられた         無期禁固刑に処せられた
                          
ドゥイッ(2012年2月)        キュー・サンパン(2022年9月)
                                   
      写真提供:カンボジア特別法廷

3.日本の貢献

  • 日本国政府は、次の3点からKR裁判を重視してきました。 第一に、KR裁判は、1980年代末以来、我が国が積極的に協力したカンボジア和平プロセスの総仕上げで、 同国に平和を定着させるために極めて重要であること。第二に、本件裁判は、犠牲者への正義の達成に資すること。 第三に、クメール・ルージュ裁判は、カンボジアにおける法の支配の確立に資することです。
  • 我が国は、国際社会で裁判の立ち上げ及び実施に向け主導的な貢献を行ってきました。 裁判の立ち上げに関する二度の国連総会決議(2002年12月及び2003年5月)を成立させ、これまで野口元郎最高審判事、藤原広人捜査判事部分析ユニット長、前田優子広報官及び藤井寛子情報管理補佐官などの日本人が活躍してきました。 財政的支援の面では、2022年9月現在までに、我が国は、これまでの国際社会の支援総額の約3割に当たる約8千8百万米ドルの支援を行い、諸外国中で最大の協力を行いました。また、裁判立ち上げ以降、プノンペンでフランスとともに支援国会合の共同議長を務め特別法廷の進捗をフォローしてきました。

4.裁判関連文書センター(LDC) 

  • 我が国はKR裁判のレガシー支援にも力を入れています。裁判の結審事案の裁判文書や裁判映像、関連文献を保管し、多くの人々がKR裁判やKR政権期に関する情報にアクセスする、またセミナー等の行事開催を通じて歴史を次世代に伝えることを可能とするため、裁判関連文書センター(Legal Documentation Centre relating to the Extraordinary Chambers in the Courts of Cambodia (LDC))の設立(2017年6月)やその内部設備等の整備を支援しています。 
              
       LDCの建物                            資料等の保管庫                           開所式当日のLDC
 
クメール・ルージュ特別法廷での勤務
 
 クメール・ルージュ特別法廷では,下記UNAKRTのウェブサイト上,また一部のポストについてはESCAPを通して,求人案内を行っています。法廷での勤務にご関心がある方は,ぜひご確認ください。
 
   国連クメール・ルージュ特別法廷採用HP:
   http://unakrt-online.org/recruitment
   https://www.unescap.org/jobs
 

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